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特技はフットワークの軽さの(24)。読書と旅行と音楽と写真が好きです。主に東海・近畿をうろちょろしています。

恋と愛と情と結婚 川村元気『四月になれば彼女は』を読んだ

 表紙のウユニ塩湖だと思われる写真に惹かれて、映画製作者として著名な川村元気さんの恋愛小説を読みました。思わせぶりなタイトルが素敵です。 

四月になれば彼女は

四月になれば彼女は

 

 

あらすじ 

4月、はじめて付き合った彼女から手紙が届いた。
そのとき僕は結婚を決めていた。愛しているのかわからない人と。

天空の鏡・ウユニ塩湖にある塩のホテルで書かれたそれには、恋の瑞々しいはじまりとともに、二人が付き合っていた頃の記憶が綴られていた。
ある事件をきっかけに別れてしまった彼女は、なぜ今になって手紙を書いてきたのか。時を同じくして、1年後に結婚をひかえている婚約者、彼女の妹、職場の同僚の恋模様にも、劇的な変化がおとずれる。
愛している、愛されている。そのことを確認したいと切実に願う。けれどなぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去っていってしまうのか――。
失った恋に翻弄される12カ月がはじまる。

 

文藝春秋 HPより)

 

 

恋と愛と情と結婚

 元恋人の手紙は静かな湖に放たれた小石のように、穏やかな同棲生活を送っていた主人公とその婚約者を揺り動かします。その揺れはいつしか主人公の周りをも動かして、登場人物たちは自分たちの「恋」「愛」「情」に向き合っていく。

昔経験した恋のような感情はもうないけれどこの結婚は正解なのか、なぜ人は結婚するのかと思い悩む主人公ですが最後の選択は、物語の美しい情景と相まって、心に残るものとなりました。

 

過ぎていく12ヶ月ときれいな過去

この話は最初に元恋人の手紙が届いた4月から次の3月までゆっくりと進んでいきます。主人公はその1年で過去と現在を見つめ、未来へと目を向けます。

この1年という単位がとてもいいなと思いました。怠惰でなあなあでやってくる未来ではなく、自分でじっくり悩んで選んで掴む。なかなか急に変わることは難しいし同じところを何回も回るけど、そうやって試行錯誤したら1年後には別の場所に立っていられる可能性があるのだなと。

元恋人との過去は何回考えても変わらないし、急に海外からの手紙なんていう手の届かない形で再会して、思い出は色褪せないまま綴られていて、正直こんな元カノいるなんて反則やろって気持になりました。

過去なんてどうやってもきれいで大切なものなんだから、その過去に囚われることなく、今を生きる栄養素にできたらいいなと思いました。

 

余談:元恋人の撮りたいもの

 元恋人と主人公は大学の写真部仲間。物語の中で、元恋人が主人公になにを撮りたいのかを尋ねられ、「写らないもの、でしょうか」と答えるシーンがすごく印象に残っています。

 昔Iphoneで写真を撮るのにはまっていたとき、一番撮りたかったことは今ここの雰囲気だったことを久しぶりに思い出しました。その時は一眼を買っても重たいし使わないかなと思い購入を見送ったのですが、この冬、また一眼調査ブームが自分の中に再燃しそうです。こういう風にフィクションの世界に現実の自分が影響されるのも本や映画のいいところだとひそかに思っています。