夕空に背のび

特技はフットワークの軽さの(24)。読書と旅行と音楽と写真が好きです。主に東海・近畿をうろちょろしています。

加藤シゲアキ『ピンクとグレー』を読んだ 「アイドル」が書いた「芸能界小説」、じゃない

去年の今頃、私は関ジャニ∞を好きになりました。そこから一年。ジャニーズ好きで読書好きなら絶対読みたいと思ってた『ピンクとグレー』をようやく読みましたのでブログに書きます。

 

ピンクとグレー (角川文庫)

ピンクとグレー (角川文庫)

 

 

 

 

 あらすじ

大阪から横浜へ越してきた小学生の河田大貴は、同じマンションに住む同い年の鈴木真吾と出逢い、中学高校大学と密接した青春時代を送る。高校生になった二人は、雑誌の読者モデルをきっかけにバイト替わりの芸能活動をスタート。大学へ進学した二人は同居生活を始めるが、真吾がスターダムを駆け上がっていく一方で、エキストラから抜け出せない河田だけが取り残されていく。やがて二人は決裂。二度と会うことのない人生を送るはずだった二人が再びめぐり逢ったその時、運命の歯車が回りだす…。

 

加藤シゲアキ『ピンクとグレー』 | KADOKAWA より)

 

Key pop

親友への情愛と嫉妬と羨望

物語はりばちゃん(河田)がごっち(鈴木)のことを綴るという形式でスタートします。

二人の幼少期の思い出、アルバイトのつもりで始めた芸能生活、ごっちの恋、 売れに売れていくごっちとくすぶり続けるりばちゃんの決別。そして決別してもなおごっちのことを嫉妬と羨望が入り混じったような目で見るりばちゃん。一緒にいたはずだったし、これからも一緒にいるはずだったごっちが自分から猛スピードで離れていくさまを、ただ見るりばちゃんが切なくて痛々しいです。

おいて行かれることの寂しさや悔しさは、結局ごっちにも向けることができなくて、自分に跳ね返ってさらに痛くなる。尊敬すべき友人が身近にいた人は、誰もが一度は感じた感情なのではないかと思います。

 

 「やらないなんてないから」

ごっちの生き方の道しるべだったこのセリフ。彼はこの信条をもって、芸能界に果敢に挑んでいきます。一瞬のチャンスをつかむには、覚悟を決める前でもひらめいて決断して動くことが大切なのかなと思い知りました。

 

「白いメダカ」と「オニアンコウ」

物語に登場する二つの耳慣れない生物はそのまま登場人物を連想させます。個人的にはこの比喩の使い方がいいなと思いました。

二人の幼馴染の石川曰く「色はその物質が嫌って弾いた」もので、「色素がいらないからアルビノに生まれたのにまだ他者の目にうつってしまい」「嫌った色をうつる自分を見られたくなくて、すべての色を吸収して透明になった」白いメダカ。

 一方でオスはメスに取り込まれ、生殖器としてしか活動しえないオニアンコウ。

誰が白いメダカで誰がオニアンコウなのか。ぜひ想像しながら読んでほしいです。

 

二つの結末 その最後を「幸せ」と呼びたかった

りばちゃんがごっちについて書いた文章の結末。そして小説としてのラスト。別離から年月が過ぎて再会した二人が迎えた結末は衝撃的なものでした。

特に小説の最後はさまざまに解釈できると思いますが、どうしたって離れられなかった二人が 、再会した後その結末を選んだのだとしたら、もうそれは一種の幸せなんじゃないかと私は受け取りました。もっとさわやかに終わらせようとしたらいくらでも方法はあっただろうけれど、この締め方が『ピンクとグレー』を余韻をもって終わる小説に仕立て上げたのだと思います。

 

これは「小説家」が書いた「小説」

冒頭でも書きましたが、私がこの小説を読もうと思ったきっかけはジャニーズの加藤さんが書いたからというそ一点だけでした。読み進めていくうちに誰が書いたとかそんなことは忘れて没頭していました。芸能界の裏側が書いてあるわけでもない、ただ、二人の男性の切なくて痛い物語でした。

アイドルが書いたとかそんな枕詞全部取っ払って、切なくて灰色の世界観が好きな方に読んでほしい小説です。