夕空に背のび

特技はフットワークの軽さの(24)。読書と旅行と音楽と写真が好きです。主に東海・近畿をうろちょろしています。

恩田陸『木曜組曲』を読んだ 華麗なる女性文章家たちの告白劇

 『蜜蜂と遠雷』で直木賞本屋大賞をW受賞し、2017年最も話題となった作家のひとり、恩田陸。あらすじに惹かれて恩田陸の『木曜組曲』を読みました。

薬物死を遂げた偉大な小説家に人生を絡めとられた女性たちの物語です。二転三転する静かなミステリーに最後まではらはらわくわくしました。

 

木曜組曲 (徳間文庫)

木曜組曲 (徳間文庫)

 

 

 

あらすじ

耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺か―?気鋭が贈る、長篇心理ミステリー。

Amazon 商品ページより)

 

 Key pop

華麗なる芸術一族の文章家たち

登場人物がかなりややこしい今作。編集者のえい子以外は、亡くなった時子と親戚関係にあたります。

なにこのややこしさ。編集者えい子以外は時子と親戚関係になり、そのなかでも絵理子以外は時子と血のつながりをもちます。恋愛関係が奔放なのも芸術肌な一族の特徴で、異母兄弟が仲良くするのも当たり前だそうで。ここ聞くだけでなんとなくそれぞれが抱える複雑さが垣間みえます。

 

 偉大なる小説家の功罪

偉大な小説家を親戚に持ち、さらに自身も文章が好きとなれば、その小説家を意識して生きていくのはもはや必然。また編集者のえい子にしても、自分が見つけ2人3脚で仕事をしてきた時子の存在は、彼女が死んだからといって簡単に消えることはないもの。

大きすぎる存在は彼女たちの人生に影響を及ぼし、また時子自身もそんな親戚たちに一筋縄ではいかない思いを抱えていきます。

そんな彼女たちの思いが、物語が進むにつれて告白され、「時子が死んだ木曜日」に何が起こったのか明らかになっていきます。彼女たちの発言によって真相があっちへいき、こっちへ戻りするさまはテンポよく少しコミカルですらあります。さっくさく読めちゃう。

 

誰が一枚上手だったか

二転三転する物語。それぞれの思いを抱え、物語はある結末へと落ち着きます。が、その結末の受け止め方も多種多様。自分の思いを昇華させようとするもの、新たな決意を胸に抱くものなどなど。時子を含めた6人の女性のなかで、誰が一番したたかだったかということにもぜひ注目してほしいです。

 

テンポよく読める静かなミステリー さくっと読みたい人におすすめ

あまり分厚くない小説ですし、血縁関係こそ複雑ですが登場人物は死者を含めて6人。物語の舞台もほとんどが時子の館であるうぐいす館から動きません。ほぼ会話で進行する物語はテンポもよく、さくっとミステリーが読みたいなという方におすすめです。