夕空に背のび

夜とラムネ

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あの日の久高島

あの時の衝動はどこからきたんだろう。

大学卒業を目前に控えた2月。手帳には卒業旅行と就職準備の予定がパンパンに詰め込まれていて、余裕なんてどこにもなかった。事実、両親には「いつ引っ越すの?準備は?」とせっつかれていた。

 

それなのに、私は。

沖縄行きのチケットを手に関西空港に来てしまっていた。

 

那覇からバスに乗って船に乗って、たどり着いたのは久高島という小さな島。

 

 

ここは島全体が聖地とされている場所。昔からずっと信仰とともに暮らしている、小さくて穏やかな島。

 

港で神様に挨拶をしたら、レンタサイクルで島を一周する。

 

舗装されてない道をガタゴトと行く。浜を見つけてはしばらく海を眺めて、写真を撮って。

直前まで天気が悪かったという冬の沖縄も、なぜかこの日だけは時々青空を見せてくれた。万年雨女なのに一人旅の時だけ天気が味方する。

 

そう、これが初めての一人旅だった。衝動だけで来るには遠かった土地だけど、一人でどこまでいけるのか試してみたかったのかもしれないな。そのくせ慣れ親しんだ沖縄を選んだのも私らしい。冒険心と慎重さの間でいつも揺れている。

 

猫がいる場所はどこだっていいとこだよ。

 

何でうちに泊まらないの~次は電話しなよ~って言ってくれた。

 

長生きベンチだって。確かに心が落ち着く眺め。

 

人生で一番おいしかったサーターアンダギー。お土産にしたら父がとても喜んでいた。

 

 

忘れないな。

ずっとバスに揺られていた時間の少しの不安も、海を見たときの心の高鳴りも、この日頭の中でなっていた曲も。

 

どこにでも行けるって思ったんだ。笑ってしまうぐらい青いけど。

だからきっと大丈夫。あの日も、これからも。