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115冊から選ぶ2020ベスト9冊

 
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不思議な一年、手応えのない一年がようやく終わる。実感もないままに。しんどくなって

このブログを始めてから初めて、本をほとんど読めない時期が訪れてしまって悲しかったけれど、それでも振り返ってみると本に救われた一年でした。

今年読んだ115冊から選んだ、ベスト9冊を順不同でお送りします。

 

 

世界の「住所」の物語

自分が生まれたときから当たり前のように持っている「住所」。その考えることもなかった、当たり前の意味を、初めて気にするようになった。日本の通りには確かに名前がないなとか。住所がないと荷物が届かないし、行政サービスも受けられないけど、でも納税などから逃れられなくなるなとか。日常の中のいろいろなことに疑問を抱くことの楽しさ、新しい視点をもたらして世界の解像度をあげてくれた一冊。

 

パリと生きる女たち
パリと生きる女たち

パリと生きる女たち

 

ファッション、仕事、生き方にこだわりを持つ女性たちがたくさん登場する本。パリに生きているからかっこいいのか、パリが女をかっこよくするのか。何歳でも自分の好きを貫く姿勢にとてもしびれる。好きをまとってしなやかに生きていきたくなった。

 

 

2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム

初めて読んだお片付け本。ルールを決めて仕組みを作るという考え方ももちろん良かったのだけど、一番心に響いたのは「断捨離をすることで部屋や服が駄目だし…と思うことがなくなった」という著者自身の感想。毎日目にするもの、選ぶものが少しずつ自分の心を削いでいっているのだとしたら、こんなに怖いことはないなと。物を捨てるルールを作って、部屋や心を健やかに保っていきたい。

 

たちどまって考える
たちどまって考える (中公新書ラクレ)

たちどまって考える (中公新書ラクレ)

 

ヤマザキマリさんはその突き抜けるパワーが好きで、今年はエッセイを数冊読みましたがベストはこちら。コロナ禍の中で書かれたエッセイで特に興味深かったのは、イタリア人と日本人のコロナへの向き合い方の違いと、西洋の政治をそのまま日本に持ってきたことに対する良し悪しの考察。今後のことを考えるために、来年も読み返してたくさんのことを受け取っていきたい一冊。

 
パワー
パワー

パワー

 

グロテスクで、でも純粋に面白かった。ある日突然女性だけが電撃を出す能力を身に着けて、男女の力差が徐々に逆転していく話。作中の男性の描写は、実際に今の世の中で主に女性が受けている扱いなんだと思うと、とてもゾッとした。日常は言葉にされた途端に、はっきりと輪郭を持って襲ってくる。生々しい読後感に震えた。

 

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

私の好きな芸人さん第二位の阿佐ヶ谷姉妹のエッセイ。温度感が本当に良くて大好きな一冊。違う人間同士で共に暮らし、受け入れ、尊重し合う関係性が愛おしい。こんな感じで誰かと生活を紡いでいけたらいいなあと思う。それと猫タイプというミホさんが言う、「お姉さん過多」という感覚にすごく心当たりがあって親近感がわきました。

 

鈍感な世界に生きる敏感な人たち

HSPという言葉が世の中に徐々に広まっている気がする近年、自分自身も病院で診断は受けていないものの、その資質が強いなというのを感じている。この本で紹介されていることは、自分の考え方の癖として心当たりがあることがたくさんあって、あ、これもHSP故なんだなと思えて少しだけ楽になれた。ただそういう「私は敏感だから」という感じを是とすることが自分は嫌で、ずっと「敏感じゃない普通の人」になりたくて、落とし所を見つけていかなくてはいけないんだろうなと思う。

 

十二国記シリーズ
十二国記シリーズ 11冊セット

十二国記シリーズ 11冊セット

  • メディア: セット買い
 

出会えて良かった。どうして子供の頃に通らなかったのかが分からない。辛くて苦しくて、でも生きることをあきらめない人達が、強くかっこよく愛おしい。読む本読む本どれも辛かったけど、生きることの強さをひしひしと感じるシリーズでした。学生の頃に出会ってみたかった。「魔性の子」「丕緒の鳥」が特に好きです。

 

どうしても生きてる
どうしても生きてる (幻冬舎単行本)

どうしても生きてる (幻冬舎単行本)

 

朝井リョウはいつもこちらを見透かして、心の一番柔らかい場所を抉ってくる。というのが私の朝井リョウへの印象なのですが、今作もがっつりその通りでした。この人は本当にどうしてこんなに見えているのか。一作目が特に痛いほど分かってしまって辛かった。「どうしても生きてる」。「生きている」でも「生かされている」でもなく「生きてる」。これが今年の全てでした。